小論文に序論は要らない

入学試験や入社試験で課せられることのある「小論文」の書き方を考えてみます。「序論」から書き始めるよう指導している本やホームページを良く見かけますが、筆者は賛成しません。「大掴みな結論」から入り細かい話を徐々に書き足していく順序こそが実際的です。

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最初に明確にしておきますが、ここでいう「小論文」は、入試の場において「○○について思うところを述べよ」などという形で執筆を強いられる文章です。このような小論文のフォーマットはどうあるべきでしょうか?

小論文について論じているブログなどをざっと検索したところ、推奨されているフォーマットには次のようなものがありました。

  • 「序論」→「本論」→「結論」
  • 「問題提起」「反対意見への理解」「自分の意見の提示」「理由説明」「結論」
  •  「問題提起」→「自分の意見の骨子」→「意見の展開(理由・背景・実例など)」→「結論」
  • 「問題提起」→「反論の提示」→「反論の問題点の指摘」→「結論」

 どうもみなさん「問題提起」から入るのがお好きなようです。しかし、これらは「小論文」を書くシチュエーションに適合していないと思います。

繰り返しますが、ここでいう小論文は試験会場で書き上げる文章です。従って次のような特有の制約条件があることを忘れるわけにはいきません。

  • 極めて厳格な時間制限がある。
  • 執筆に使えるのは鉛筆と消しゴムだけ。
  • 辞書や参考書の助けを借りることができない。材料に出来るのはいま頭のなかにあるものだけ。

推敲は事実上無理。重要ポイントはもらさず確実に書き、また、一旦書き下ろしたものは消すことなく活かす方向で考えなければなりません。

もう一つ留意したいのは、提起すべき問題はとうの昔に明らかになっているということです。出題者の方から課題が指定されているのですから! この状況でわざわざ序論なんかに時間を費やす必要はないでしょう。

まず書くべきは結論

とにもかくにも、どうしても外す訳にはいかない重要ポイントをいの一番に書くことです。これで、時間が足りなくて途中までしか書けなかったとしても、最小限の内容は伝えることができます。そして、小論文において最重要ポイントと言えば「結論」に他ならないでしょう。

たとえば課題が「天皇制について思うところを述べよ」だとしましょう。間違っても「そもそも天皇制とはなんだろうか?」などと書き始めてはなりません。あなたが既に歴史や社会学の論文を何報も公表した専門家ででもあれば話は別ですが、「思う所」に辿り着く前に行き詰まってしまうのが関の山です。そうではなく、「天皇制はこれからも末永く維持すべきだ」とか「時代の変化にあわせて天皇制も変化してしかるべきだ」といった感じで始めるのです。

すなわち、書き出しでは「質問に対してザックリ答える」のです。

結論を「少しづつ」補足する

書き出しに結論を書いたら、次にその結論を膨らませていきます。結論をいくつかに分解し、それぞれを少しづつ詳しくしていくのです。ここでいきなり細かい話に突入してしまうと袋小路に入ってしまって続きが書けなくなることがあります。「少しづつ」書き足すのがコツとおぼえてください。

前傾の例にそって「時代の変化にあわせて天皇制も変化してしかるべきだ」が結論だと仮定しましょう。続きを考えてみます。

まず「時代の変化」と「天皇制の変化」に分解。次に「時代の変化」をすこしだけ具体的にします。たとえば「グローバル化で日本にも欧米の価値観がたくさん導入された」とかです。さらにこれを分解し「欧米の価値観」を具体化させます。「イエ制度は過去の話になった」とか、「良くも悪くも個人主義の時代である」とか、そんな感じ。

次に「天皇制の変化」を詳しくしていきましょう。「戦前は天皇陛下といえばまさに雲の上のような存在だったが、今はそうではない」とか。「地方にもよくお出かけになり、市民と直接語り合う姿も珍しくなくなった」などとネタが思い浮かびます。

ここまでで400-500文字ぐらいは書けるでしょうか。ここで中断を余儀なくされたとしても、SDSでいう「要約」と「詳細」あるいはPREPでいう「要点」・「理由」・「例」の体裁はできています(前記事参照)。結論を少し言い換えた文をこの後に加えればとりあえず完結です。

余白がまだかなりあって時間にも余裕があるなら、ここで一旦読み返してみましょう。明らかに何かを書き落として意味不明な状況になっている文があればとりあえず修正。また、舌足らずだと思えたり論理が飛躍したりしている部分があったら、最終段落への追記によって問題を解消できないか考えてみましょう。

更に余裕があるなら、具体例を足す、反対論を紹介してさらに否定してみせる、などの展開を考えてみてもいいです。この辺までくると、連想が連想をよんで頭のなかにいろいろ小ネタが蓄積しているのではないでしょうか。骨格は既に完成しているのですから、思い切ってこれらを展開してみるといいでしょう。
 

やはり序論は要らない

まず結論を書く。結論を少しづつ補強する。

やはり小論文を書くならこれが最強パターンだと私は思います。上記の具体例で、時間の無駄を最小限に抑えつつ論旨明快な文章を確実に仕上げられることが理解いただけたと思います。時間が足りなくなってもそれなりの対処が可能であり、一方、時間に余裕があるなら文章をふくらませるのも容易なのです。

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