テンの打ち方(2)読点と語順

テン(読点)の打ち方にも法則が存在します。法則から外れたテンは読者を混乱させる元になります。法則を正しく理解し順守することは、わかり易い文章を書くために非常に大切なことです。ここでは語順との関係について説明します。

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『日本語の作文技術』(本多勝一著)を以前に紹介しました。同書ではテン(読点)の打ち方には厳密なルールが存在することを指摘し、そのルールの詳細を豊富な例文を用いて説明しています。同書が主張するのは、(1)テンを打つべき箇所は3つの条件のいずれかに該当してあり、(2)その3条件のいずれにも該当しない場所にテンを打ってはならないというものでした。

前記事ではそのうち第1の条件について述べました。本記事では第2の条件すなわち「原則的語順が逆順の場合にテンを打つ」について書きます。

「逆順」とは何か

この趣旨を理解するには、同書がテンの問題とともに詳細に論じている「語順」の問題を理解しなくてはなりません。

語順を決めるための4つのルールを同書は提示しています(以前の記事参照)。ところが、このルールに反していてもどうしても文の先頭に持って行きたい句がでてくることがあります。文頭にある語句は読者に特に強く印象づけやすいもので、その効果を狙った倒置は強調のための有力な手段です。

そのようなシチュエーションで「テン」の出番があるわけです。本多勝一が挙げている例文の一つが以下のものです。

Aが私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCに紹介した。

この例文では以下の3つの句が「紹介した」に掛かっています。

  • Aが
  • 私がふるえるほど大嫌いなBを
  • 私の親友のCに

ところが上例のようにテンを打たずに書くと、「ふるえる」のが「私」なのか「A」なのか紛らわしくなります。「原則」に従うなら「私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCにAが紹介した」であり、これなら混乱はなくなるのですが、「A」の存在は埋没してしまいます。読者に「A」の存在を印象づけつつ混乱を避けるには次のようにすればいいというわけです。

Aが、私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCに紹介した。

これが「倒置のテン」の例となります。

一般に「主語の後にはテンを打て」と言われます。上例はその典型に見えます。しかし、本多勝一の考察によれば、このテンは「主語だから」ではなく、強調のための倒置に対処するものと見做すべきなのです。したがって、主語以下に混乱をもたらす特段の要素がないのであれば、そこが主語だからといってテンを打つ必要はないというわけです。

まとめ

「倒置のテン」を適切に使うことで、文章をわかりやすく保ちながらメリハリを付けることができます。そのためには文の構造に注意を払うことが大切です。一方、いいかげんなテンは読者を容易に混乱させてしまうものです。テンの打ち方にも根拠を持たせなければなりません。

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