定型表現を舐めるな

今回は「定型表現」を学んで文章力を向上させるというお話。実用文を効率的に書くには「型」を活用することも大切です。紋切り型も必ずしも悪いことではありません。

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定型表現を暗記せよ

ふつうの文章読本では紋切り型はやめよというものです。個性を反映した独自性あふれる表現方法が推奨されるはずです。この考え方に異議を申し立てる人は多くないように思われます。

ところが、『日本語作文術 伝わる文章を書くために 』(野内良三著)は、この主張にハッキリと異議を唱えます。むしろ紋切り型の表現(定型表現)を活用せよというのです。

著者の野内氏は、本などを読んでいて見つけた紋切り型の決まり文句的なもの、すなわち「定型表現」を長年に渡ってひとつひとつカードに書き溜めていていき、4300枚ものカードを蓄積するに至ったそうです。

この過程を経て野内氏は自分の書く文章の改善を果たしました。漢語の多い硬い文章から和語の多い柔らかい文章に変化したといいます。

野内氏は文章力を向上させたいなら名文というより定型表現を覚えよと提案しています。「大衆小説」がその情報源として推奨されます(純文学では定型表現を避けようとするので、教材としては今ひとつ有用でない)。また、漫然と読むのではなくカードに書き起こしてデータベース化しておくという過程が、文章力向上を図るためには重要だとも言っています。

月並み・平凡といわれるが?

野内氏の主張はシンプルです。

「たいていの場合は定型表現で用は足りる。」

常識をバッサリ一刀両断ですね。しかし、そう言われればそうかもという気になります。

文章が独自性を持っていることは大切なことです。しかし、文章を構成する全てのパーツが「独自的」である必要はないのです。

定型表現は「引用」の形で使うとよい

野内氏はまた、定型表現はそれと断って使えばいいと言っています。さらに、「血は争えないというが、......」のように定型部分を引用の形にすると容易に再利用できると、コツを披露してくれています。

「型」はやはり無視できない

生まれつき文才に恵まれ、文豪と呼ばれる将来が約束されているような人は別ですが、ふつうの人は何もないところから独創的な何かを作り出すことなどそうそう出来るものではありません。それでも、現代人は文章を紡ぎ出さない訳にはいきません。自分の力だけで出来ないことは、迷わず先人の力を借りるのが現実的というものです。

「定型表現」は、まさに先人の知恵なのです。

一つ一つは月並みなようでも、それぞれ形の違う定型を組み合わせるところで創造性を発揮できます。ゼロから何かを作り出すのは大変ですが、組み合わせを考えるのはそれよりずっと簡単で実際的です。

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