読書感想文は本当に「感想文」なのか?(2)

小学校で「読書感想文マニュアル」が配布されていたという話題。その原文らしき画像を見つけたので、あらためてその意図を考察してみたいと思います。私はこのマニュアルを肯定的に評価します。

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前回の記事、「読書感想文は本当に「感想文」なのか?」の中で、「読書感想文マニュアル」の具体的な内容がわからないので、この試みの全体的な妥当性は判断できないと書きました。

ところが、その後、おそらく話題のもととなったと思われる「マニュアル」の画像が掲載されている記事を発見しました。

これによって当事者の意図がかなりはっきり読み取れるようになりました。読書感想文は次のようなものと捉えられているようです。

  • 自分が成した読書体験により、より良いものの考え方をできるようになった。この読書体験の有効性を読者に説明する

「マニュアル」では「シンデレラ」を例にとりながら、具体的な書き方を次のように示していました。

  1. 小説の一部を抜き出す。
  2. 抜き出した部分について自分の考えを書く(「のめりこむ感じ」で書けとある)。
  3. 本を選んだきっかけ、読み始めた時の感想を書く(「エピソード」を盛り込んでリアルに書けとある)。
  4. 自分の体験を書く。
  5. 書き出しの部分に戻る(新しい感想を付け足す)。
  6. その本を読んで、自分がどう変わったかを書く。

ここで提示された型は、DESCという文章形式の変形と見做すことができます。

DESCについては、以前「起承転結・PREP・SDS......作文の「型」を身につければ百戦危うからず」という記事の中で紹介しました。具体的には、以下のような構成で文章を書けとするもので、説得用の文章に向いているとされます。

  • Describe(描写): 問題を客観的に描写する
  • Express(表現): 主観的な意見や問題点を述べる
  • Suggest(提案): 上記の問題点に対する解決法を提案する
  • Consequence(結果)またはChoose(選択): 提案を実行した場合に期待できる結果を提示する

「マニュアル」に示された項目をDESCの項目と照合してみましょう。

  • 「小説の一部を抜き出す」......これからどの本のどの箇所を取り上げるつもりなのかを示す。すなわち「問題の描写」といえます。
  • 「抜き出した部分について自分の考えを書く」「本を選んだきっかけ、読み始めた時の感想を書く。」......まさしく「主観的な意見」です。ただし、「抜き出した部分についての考え」と「読み始めた時の感想」はダブっていますが。
  • 「自分の体験を書く。」......「主観的意見」を「実例」によって補足せよと言いたいようです。
  • 「新しい感想を付け足す」「自分がどう変わったかを書く」......まさしく「結果」。

結論として、この「マニュアル」を私は肯定的に評価したいと思います。読書感想文は説明文であり、説明文としての作文を効果的に成立させるための「型」を示す。その方向性は間違っていません。

もっとも、いくらわかりやすく例示する必要があるとはいえ「シンデレラ」の文例は陳腐すぎないか? とか、どうも小学一年生にこれを配ったらしいのだが「エピソード」とか「クライマックス」とか言われて小学一年生に理解できるのだろうかとか、疑問を感じないわけではありません。

しかし、全体としては悪くない「マニュアル」といってよいでしょう。

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