MS-IMEとgoogle日本語入力は、かな漢字変換についてはそれぞれ充分な性能を持っていることが確認できました。どちらかが圧倒的に優っているとも劣っているとも言えません。そうなると、変換機能以外の特徴も比較して、どちらを使うか判断したいところです。

３回に分けてMS-IMEとgoogle日本語入力の比較を試みました。実験としては荒っぽいものではありますが、結果は興味深いものでした。

人名ならgoogle

googleは、初回の人名変換実験の結果はもちろん「生物学の教科書」のテストでも人名に強いところを見せつけてくれました。「見田宗介」など正直いってそれほど一般に浸透した名前とはいえないように思えますが、ちゃんと変換してくれました。MS-IMEが人名と認識してくれなかった「リチャード・ドーキンス」もgoogleは完璧でした。たくさんの人名を入力する機会のある人ならまずgoogleはインストールしてみると良いでしょう。

意外に賢いMS-IME

しかし、最初の「報告書」のテストでMS-IMEがパーフェクト変換を達成したのは驚きました。これに対してgoogleは「購買機械」とか「賞典外」とか、なにか考えすぎている感じです。もっとも「約款」ではgoogleの方がパーフェクト変換をやってくれており、両者の違いは誤差範囲とみるべきでしょう。

ネット掲示板などを検索するとMS-IMEが馬鹿すぎて他のIMEに乗り換えたといったコメントが散見されます。しかし、この認識には多分に思い込みが含まれているのではないかと考えざるをえないのが今回の実験結果でした。しかも、最初の記事で述べたとおり、私の環境ではMS-IMEはほとんど使っていないので学習効果もほとんど反映されていないはずなのです。実は私もこれまで根拠なくgoogleの方が圧倒的に賢い変換をしてくれるだろうと思い込んでいたのですが、結果は興味深い誤算でした。

最新のwindows１０に添付されるMS-IMEは自動更新のオンライン辞書をサポートしていると聞きます。となると現在私が使っているバージョンのMS-IMEがgoogleに負けている点もカバーできているかもしれません。近い将来windowsのアップデートを成し遂げた際には改めて調査してみたいと思います。

甲乙つけがたい便利機能

 IMEの使い勝手は変換効率のみでは評価できません。MS-IMEにもgoogleにもいろいろと便利な機能が備わっており、それぞれの有用性をどう評価するかも重要です。

たとえば就職活動に際して職務経歴書を書かなければならないといったシチュエーションなら、辞書をその場で引けるMS-IMEは便利かもしれません。しかし、googleの日付変換機能は日常の作文で便利ではないでしょうか。

辞書で用法が確認できるMS-IME

憲法草案には「国民主権の下」という言い回しが登場します。文節変換で入力していた場合、MS-IMEならば辞書を引いて「下」なのか「基」なのか「元」なのか確認したうえで適切な漢字を選択できます。

電卓・カレンダー機能を備えるgoogle日本語入力

googleでは例えば「１＋１＝」と入力して変換キーを叩くと「２」を入力できます。「２＊（３－４）＝」のようなカッコつきの式にも対応しています。「３＾２＝」とすれば３の２乗が計算できます。

更に便利なのが日付変換機能です。

まず、「きょう」と入力して変換キーを叩くと日付を入力できます。今日が何曜日だったかわからなくなった場合も安心です。また、西暦も元号もサポートされています。

私は今年が平成何年だったか いつもわからなくなってしまい、公的文書作製の際にいつも不便を感じていました（中曽根が元号法などというバカな法律を作ってくれたおかげで全く迷惑 しています）。しかし、google先生は偉大です。「ことし」と入力して変換を試みれば「平成２８年」と教えてくれます。

この他、「きょねん」・「きのう」・「おととい」・「さきおととい」・「しあさって」なども有効で、変換を試みることにより、それぞれ対応する日付や曜日を変換候補に出してくれます。「やのあさって」はダメのようです。

 まとめ

ここまでを要約すると次のようになります。

• かな漢字変換の精度は、MS-IME、google日本語入力のどちらも実用上充分であると言えます。
• googleは人名にとにかく強いです。
• 両IMEはそれぞれ無視しがたい便利な機能を有しています。

結局、どちらを選択すべきでしょうか？　私としてはおおまかに次のように言えると思いました。

• 私用・インフォーマル・カジュアルな文章を書くことが多いならgoogle
• 仕事に使う・フォーマルな文章を書くことが多いならMS-IME

今回はこれにてとりあえず区切りとしますが、そのうち会話文や方言を含んだ文章で両IMEがどのようなパフォーマンスを見せるか比較してみたいと思っています。