文章力を磨く:朝日新聞を15文字で批判してみよ

簡単な文章力向上訓練の方法を紹介します。超絶的に少ない文字数で、言いたいことを余すことなく表現してみる訓練です。

これによって、語彙や言い回しの引き出しを増やします。さらに、主題を見極めるセンス、適切な材料を拾い出すセンス、本題から外れた材料を思い切って捨てるセンスなどを鍛えます。

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良い文章を書けるようになるには、やはり訓練を積まねばなりません。しかし、具体的にどのようにして訓練を成立させるかが悩みどころです。

身近に面倒を見てくれる講師がいるなら、その先生に課題を出しては叱られることを繰り返せば良いことですね。しかし、ほとんどの人はセルフサービスにて文章力を磨かざるを得ないでしょう。できれば特別な道具や教科書を使わず、スキマ時間を有効に利用でき、忙しい人でも無理なく実践できる文章力養成法が望まれるところです。

そこで今回提案したいのが、「15文字コメント練習法」です。

その手順は次のとおりです。

  1. まず批判の素材を用意します。少なくとも最初の段階では、あなたとは相いれない立場の人たちによる論説が素材に向いています。たとえばあなたが熱烈な自民党支持者で安倍政権絶大支持の立場なら、素材として最適なのは朝日新聞の社説でしょう。逆に、安保法制整備や改憲に情熱を燃やす安倍氏に危惧を覚えているなら、素材は産経新聞か読売新聞から選ぶのが良いでしょう。
  2. 選んだ素材をじっくり読みます。
  3. 批判の文章を書きます。ただし、必ず15文字以内に収めること。一文字も超過してはなりません。このトレーニングにおける唯一のルールです。そして絶対不可侵のルールと考えてください。
  4. 保存して終了します。書いた15文字批判と批判元の出典情報(記事のURLなど)を適当なところに保存しておきましょう。

最初は戸惑うと思います。こう叫びたくなるでしょう。15文字なんて何にも書けないよ! ツイッターの140文字だって苦労しているのに! 

さすがに15文字で素材の主張を端から端まで網羅するのは不可能です。そこで、もっとも強く批判すべき部分をピンポイント的に抜き出す作業が必要となります。その対象は論説の結論部分かもしれないし、序論部分で挙げられた例の不適切さや恣意性といったものになるかもしれません。この作業は、執筆にあたって主題を明確化するトレーニングになります。

慣れてくるとこんな短い文字列でも様々な色を出すことが可能になってきます。意外に色々なことを言えるようになるものなのです。やっていることは俳句に似ています。文字数を指折り数えながら、少しでも自分の意見を鮮明に出すために単語を選びに選ぶのです。たとえば、最後を「...だ」にするか「...だね」にす るかだけでも大問題です。文字数だけの問題ではありません。意図どおりのニュアンスを表現できているか、より適切な言い回しが他にないか、真剣に考えるのです。

15文字という短さだけに、推敲を頭のなかで進めることが可能です。お風呂に浸かりながらとか、通勤電車の中で立ったままでも、文章をひねり出すために頭を回転させるのに支障はありません。すなわち、スキマ時間を鍛錬に有効に活用できるというわけです。

ここで紹介したのは、とあるウェブ掲示板サイトに実装されていた機能にヒントを得た訓練方法です。今から十数年前に存在し私が一時期ハマっていたそのサイトでは、それぞれの記事に対して賛成とか反対とかの意思を示す「投票」が可能でした。その際、ただ投票ボタンを押すだけでなく、ここで試みたように15文字以内の 短いコメントを添えることができたのです。

最もシンプルなのは「そうだそうだ!」とか「賛成」とか「はあ?」とかですが、しばらくするとヘビーユーザーたちはこの15文字の中で様々な趣向を凝らすようになっていきました。熟達した投票者同士となると、15文字をぶつけあって議論を戦わせることさえ可能だったのです。本当に面白い体験でした。

制約があるがゆえに、否応なく脳をフル回転させられ、創造性を発揮させられ、表現力が磨かれていきます。この15文字コメント練習法は文章力を磨くトレーニングとして本当に実際的なので、ぜひ皆さんも騙されたと思ってチャレンジしてみていただきたいと思います。

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