上手な文章より伝わる文章を

「上手な文」・「名文」が「伝わる文」になるとは限りません。

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文章にインパクトを持たせることは大切です。しかし、それは「美辞麗句や巧みなレトリックを駆使して読者を感心させること」ではありません。一般に執筆で目指すべきは「言いたいことが読者に伝わること」です。

名文・美文

『文章心理学入門』(波多野完治著)では「名文とは何か」と題し、「名文」と「美文」と対比させて次のように述べています。

  • 美文: 美辞麗句を連ねた派手な文章。文章の調子や外形がきらびやか。綺麗だが、印象が上滑りして、読者の心に響かない。
  • 名文: 内容に相応し、内容を最も直截的に表した文章。文章が名文であるための具体的な条件は、その文章が何を目的にして書かれているのかによって決まり、普遍的なものと定義することはできない。

「上手な文章」は必要ない

『SNSの超プロが教えるソーシャルメディア文章術』(樺沢紫苑著)では、大事なのは「伝わる」文章を書くことであって「上手な文章」を書くことではないと言っています。ここでいう「上手な文章」が波多野氏のいう「美文」に、「伝わる文章」が「名文」に相当すると解釈していいでしょう。

結婚式の祝辞のようなものならともかく、ほとんどの場合、「名文」を目指すべきでしょう。ビジネス文章はもちろん、ブログに挙げる文章のようなパーソナルでインフォーマルな文であってもです。

美辞麗句は調味料

それでも、ちょっとかっこいい文章を書いて人目を惹きたいという欲求に抗しがたいこともあるでしょう。

「人目を惹く」ことは決して悪いことではありません。しかし、人を引き寄せておいて、それからどうするのかが問題です。せっかく来てくれた人たちが首をかしげてみんな帰ってしまったというのでは意味がありません。まずは「名文」を目指しましょう。その目途がついて初めて「美文」を目指す余地が生まれるのです。

美文を目指すにしても、「美辞麗句」はここぞという限られた場所にちょっとだけ(一か所か二か所だけ)挟み込むのがいいでしょう。

たとえば時事ネタについて自説をブログに挙げるといった場合、イントロや経緯の説明は端正な名文として書き連ね、いよいよ自分の意見に移るというその瞬間に思いっきりべらんめえ調の感嘆詞を入れ込んでみる。これでずいぶんパンチの効いた文章となり、主張が読者に届きやすくなります。のべつまくなし感嘆詞を入れまくってしまっては読者はどこにびっくりしたらいいのか判らなくなります。結局「なんか乱暴な意見を言っている人がいる」との印象だけを持たれて終わる危険性が高いでしょう。

修辞法や美辞麗句は料理における塩と同じです。適切に塩を振った料理はとてもおいしく感じられるものですが、調子に乗って山ほど入れてしまっては料理の味など分からなくなってしまうのです。

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